発達によって起こりうる危険
見本が存在しない……男女間の恋愛を好む異性愛者ならば、大人の見本というのは周辺に簡単に見つけられます。それはテレビで見るドラマなどのタレントであったり、スポーツをしている大人であったりと、理想の存在を簡単に見つけられるのです。その見本のようになりたいという欲求から思春期を乗り越えるというようなことが可能です。逆に「こんな風にはなりたくない」というような反面教師でもお手本といえばお手本といえます。それは恋愛にしても同じことで、理想的な異性愛者の恋愛というものは、テレビや小説などの様々なメディアで散見できます。
そして簡単に恋愛という情報を友人と交換できる環境があるので、恋愛感情を昇華させやすいのも異性愛者ならではです。
しかし、同性愛者には見本というものがいないのです。自分は同性愛者だと公言して生きている人は身近にはなかなかいません。もし、テレビなどでゲイなどを売りにしていたとしても、その人たちは同性愛を「笑い」として売りにしているだけなので、到底見本といえるものではないでしょう。同性愛者の生き方としても矛盾していますし、参考にはなりません。
だからこそ、異性愛者とは違い、同性愛者は自分だけで思春期を乗り越えるという過酷な作業を行わなければいけないのです。これは10代の子供にとってどれほど大変かは言うまでもないと思います。
社会での偏見や差別……同性愛者が思春期に陥ると、すぐに自分たちが社会での異端であると気づいてしまうでしょう。本来そんなことはないはずなのに、異性愛者こそがスタンダートという風潮がそれを増長してしまうのです。
そこで自分が同性愛者だと明かすと不利益を被ると容易に想像できてしまうのです。それはマスコミなどの報道も関係してしますし、学校などの環境もそうでしょう。世の中には偏見が満ちており、少しでも同性愛をほのめかすならば、排除するという意志があるのです。周囲が日々そんな反応をするのであれば、自分という同性愛者が受け入れられないと考えてしまっても仕方がないものです。
同性愛者に対して電話相談を行っている団体は『AGP』『動くゲイとレズビアンの会』『HSA札幌ミーティング』などなどの団体があります。しかしそれらは決して多いとはいえません。それでも昔よりは増えているのです。ただし、思春期の同性愛者がこれらの団体を知ることは容易ではありません。電話番号を知る手立ても限られています。同性愛者向けの雑誌を買おうにも、その販売はほとんどが大都市で行われていますし、思春期の学生に書店で同性愛者向けの本を買うというのは少々敷居が高いと思います。買うところを見られたりしたらどう思われるかは想像できるでしょう。実質的にこれは不可能なのです。
このような環境に同性愛者が身を置くと、自分自身を否定されたような気持ちになるのです。世の中に自分の居場所はないのだと悲観した感情を抱き、自分の存在に価値がないという認識を抱きます。そうして世の中から孤立してしまい、ますます同性愛者の地位は揺らいでいくのです。自らを孤立していると感じてしまうこの孤立感には、三つの側面があるとアメリカの教育学者へトリックとマーティンはいいます。この二人は同性愛者のカップルを援助する団体へトリック・マーティン協会を創立したのです。
次はこの三つの側面について話を進めていきましょう。
感情的孤立……同性愛者を受け入れる社会が存在しないので、自分が同性愛者だと表現することができず環境的に孤立してしまうこと。そのため、感情を誰にも打ち明けられないので、友情や愛情を築くこともできない。
2.社会的孤立……同じ同性愛者を見つけることが困難で、性的指向を誰にも打ち明けられず。話し相手すらもてない。そのため孤立してしまう。
3.認識上の孤立……確固とした自分がもてず、情報も満足に入手できないため、自分が異性愛者であると誤解したままでいること。そのため異性愛者が作ったステレオタイプが普通なのだと信じてしまい、自分がどういう存在であるかということが全く解らなくなり孤立してしまうこと。
このような孤立を経験するため、同性愛者達は思春期に過度の負担を強いられることになる。そのため、様々なトラブルが生活をしていくなかで起るだろう。それは何も同性愛には限らず、職場や学校で、仕事や勉強がうまくいなかったりということにも繋がる。誰に対しても心が開けないとなると当然家庭すらこじれてしまい、立場がなくなるだろう。家族にすら心を開けないというのはとても辛いことだ。しかし自分が同性愛者であると言えるわけもない。
同性愛者であると知られれば、今の世間では排他的な存在として見られることがありうる。家を追い出されたり、暴力をふるわれたりなどだ。このように人間関係を作ることすら同性愛者にとって難しくなっているのが世間の現状だ。このような環境に置かれ孤立してしまうと「自分が悪い」という風に考えてしまう人も多い。精神的に不安定になってしまい、このような状態が続くと「引きこもり」や精神疾患を起こすことも考えられる。薬物で精神的不安を取り除こうとするあまり、別の症状が現れることもあるでしょう。
そのまま行き着く先は自殺などということもありえます。自分自身に対しての期待や向上心なども消えてしまいますし、自分がどうすればいいかというものが解らなくなるのです。
2011年5月11日